Cubaseでは、音符を入力してピアノやドラムなどを演奏させる「打ち込み」ができます。その基本となるのが、MIDIとVSTインストゥルメント(VSTi)です。
この記事では、MIDIにどのような情報が記録されるのか、入力した音符がどのように音になるのかを図と具体例で解説します。Cubase 15に付属する音源も紹介するので、これから打ち込みを始める方は参考にしてください。
- MIDIとオーディオの違い
- MIDIノートの高さ・タイミング・長さ・強さの見方
- VSTiの役割と、Cubase付属音源の種類
前回の記事「保存したプロジェクトの開き方」はこちら。

MIDIとは
たとえば、Cubaseでピアノに「ド・レ・ミ・ソ」と演奏させたいとします。その場合、音の高さだけでなく、いつ弾くか、どれくらい伸ばすか、どのくらいの強さで弾くか?も指定する必要があります。
こうした演奏情報をやり取りするための共通規格が、MIDI(ミディ)です。正式名称は「Musical Instrument Digital Interface」といいます。
Cubaseでは、この演奏情報をMIDIデータとして記録・編集できます。マウスで音符を入力するほか、接続したMIDIキーボードを弾いて演奏を記録することもできます。
MIDIとオーディオの違い
MIDIデータに記録されるのは演奏情報、オーディオデータに記録されるのは音の波形です。
MIDI
演奏情報
音の高さ・タイミング
音の長さ・強さ
ドをレに変えたり、ピアノから別の音色へ変更できる
オーディオ
音の波形
マイクで録音した音
VSTiの演奏をWAVに保存した音
声や楽器の響き、余韻も記録されている
MIDIなら、「ドをレに変える」「2つ目の音だけ長くする」「最後の音を弱く弾く」といった変更を、音符ごとに行えます。同じ演奏情報を別の音源や音色で再生すれば、ピアノの演奏をシンセサイザーの響きに変えることもできます。
一方、マイクで録音した声や楽器の響きには、音の立ち上がりや余韻も含まれます。また、MIDIでピアノ音源を演奏させ、その結果をWAVファイルなどに保存したものもオーディオです。
| 比べる点 | MIDI | オーディオ |
|---|---|---|
| 記録する内容 | 音の高さ・開始位置・長さ・強さなどの演奏情報 | 録音・書き出しによって得られた音の波形 |
| 編集する対象 | 音符ごとの演奏情報 | 録音された波形や、その一部分 |
| 音色を変える場合 | 再生に使う音源や音色を変更する | 録音された音に加工を加える |
オーディオも、音を切り貼りしたり、音量・音程・タイミングを変えたりできます。ただし、MIDIのように演奏情報が音符ごとに残っているわけではないため、MIDIほど自由に扱えるわけではありません。
MIDIに記録される情報
ここでは、4/4拍子の1小節に「ド・レ・ミ・ソ」を1拍ずつ入力する例で見ていきましょう。
CubaseでMIDIノートを編集する画面の1つに、キーエディターがあります。音符は横長の四角形で表示され、位置や横幅で音の高さ・タイミング・長さを確認できます。
| 高さ | 1拍目 | 2拍目 | 3拍目 | 4拍目 |
|---|---|---|---|---|
| ソ | ソ | |||
| ファ♯ | ||||
| ファ | ||||
| ミ | ミ | |||
| レ♯ | ||||
| レ | レ | |||
| ド♯ | ||||
| ド | ド |
ピッチ(音の高さ)
音の高さは、ド・レ・ミといった音名だけでなく、オクターブも区別されます。同じドでも、低いドと高いドは別の高さです。
キーエディターでは、四角形の上下の位置が音の高さに対応します。上の図では、ドからレ、ミ、ソへと高くなっています。四角形を上下に移動すると、演奏する音の高さが変わります。
タイミングと音の長さ
タイミングは、演奏を始める位置です。図では、1拍目にド、2拍目にレ、3拍目にミ、4拍目にソが始まります。四角形を左右に移動すると、その音が始まる位置が変わります。
MIDIノートの長さは、鍵盤を押してから離すまでに相当する長さです。図では、4つの音をそれぞれ1拍分にしています。
キーエディターでは、左右の位置がタイミング、音符(横長の四角形)の横幅がノートの長さに対応します。開始位置をそのままにして右端を伸ばすと、そのノートを長くできます。
MIDIノート=押す〜離す
音源が鳴らす音=離した後にも余韻
実際の余韻の長さや変化は、音源と設定によって異なります。
ノートの長さと、実際に音が聴こえる時間は完全に一致するとは限りません。ピアノのように鍵盤を離したあとも短い余韻が残る音や、ゆっくり消えていくシンセサイザーの音もあります。余韻の長さは音源や設定によって変わります。
ベロシティ(弾く・叩く強さ)
同じドでも、ピアノの鍵盤をそっと弾いたときと強く弾いたときでは、音の印象が変わります。この弾く・叩く強さを表す値が、ベロシティです。
最初の図の下段では、各音のベロシティを50・70・90・110にしています。右へ進むにつれて、より強く弾く指定になっています。
ピアノ音源などでは、ベロシティによって音量だけでなく、音色や音の立ち上がり方も変化します。数値と聴こえる音量が単純に比例するわけではなく、反応の仕方も音源や設定によって異なります。
| 変えたいこと | 主に調整するもの |
|---|---|
| 1つの音だけ強く弾いた印象にしたい | そのノートのベロシティ |
| 演奏全体の音量バランスを変えたい | トラックの音量など |
ベロシティを変えたら、数値を見るだけでなく、音も聴いて確かめてみてください。
VSTインストゥルメント(VSTi)とは
ここまでのMIDIデータには「ド・レ・ミ・ソを演奏する」という情報が入っていますが、MIDIデータだけでは音は鳴りません。その情報からピアノやドラムの音を鳴らすには、実際に音を生成する音源が必要です。
VSTインストゥルメント(VSTi)は、MIDIデータを読み取って音を生成できるソフトウェア音源の一種です。ピアノなどの楽器を再現するものや、音を合成するシンセサイザーなどがあります。
1 MIDIデータ
演奏情報
音の高さ・タイミング
音の長さ・強さ
VSTiへ送る
2 VSTi
ソフトウェア音源
選んだ音色で
音を生成します。
オーディオ信号を出力する
3 オーディオ信号
生成された音
スピーカーやヘッドホンで聴く音です。
MIDIデータをVSTiへ送ると、VSTiが演奏情報を受け取り、選んだ音色で音を生成します。生成された音はオーディオ信号として出力され、スピーカーやヘッドホンから聴こえます。
MIDIが演奏内容を伝え、VSTiが音を生成する。この役割の違いを覚えておきましょう。
同じMIDIデータでも音色を変えられる
先ほどの「ド・レ・ミ・ソ」を、ピアノ音色とシンセサイザーの音色でそれぞれ再生した場合を比べてみます。
共通のMIDIデータ
「ド・レ・ミ・ソ」の演奏情報
同じ演奏情報を、選んだ音色で再生します。
ピアノ音色
ピアノの響き
シンセ音色
電子的な響き
MIDIノートを編集しなければ、音の並び・開始位置・ノートの長さ・ベロシティの指定は共通です。一方、聴こえる音色や余韻、強弱の反応は、選んだ音源や音色によって変わります。
この仕組みにより、演奏内容を入力したあとで別の音色を試せます。メロディーや伴奏にどの響きが合うか、聴き比べながら選べるのが打ち込みの便利なところです。
VSTiとVSTエフェクトの違い
VSTiと名前が似ているものに、VSTエフェクト(VSTe)があります。どちらもCubaseで使うVSTプラグインの仲間ですが、役割が異なります。
| 種類 | 役割・使用例 |
|---|---|
| 音源(VSTi) | MIDIの演奏情報を受け取って音を生成します。 例:ピアノ音源、ドラム音源、シンセサイザー |
| VSTエフェクト(VSTe) | 音を加工します。 例:残響を加えるリバーブ、音域のバランスを調整するEQ |
たとえば、VSTiでピアノの音を鳴らし、その音にリバーブをかけて響きを加える、といった使い方ができます。
VSTiの種類とCubase付属の音源
作りたいパートに合わせて、VSTiや音色を選びます。代表的な種類は次のとおりです。
ピアノ音源
グランドピアノやアップライトピアノなどを再現します。鍵盤のタッチや響きを細かく再現できる製品もあります。
ギター・ベース音源
アコースティックギター、エレクトリックギター、クラシックギター、エレクトリックベース、コントラバスなどを扱います。弦楽器特有の奏法を再現できる製品もあります。
ドラム音源
キック、スネア、シンバルなどを組み合わせてリズムを作ります。リズムパターンを用意したり、生成したりする機能を持つ製品もあります。
シンセサイザー
音を合成して、メロディー・伴奏・ベースなどに使う音色を作ります。独自の画面や演奏方法を備えた製品もあります。
オーケストラ音源
バイオリン、フルート、トランペットなどを再現します。オーケストラ全体を扱える製品から、特定の楽器に特化した製品まであります。
また、1つの楽器に特化した音源のほか、さまざまな楽器の音色をまとめて扱える音源もあります。「音源を選ぶこと」と「その音源の中から音色を選ぶこと」は、分けて考えると分かりやすくなります。
Cubase 15に付属する主な音源
| 付属音源 | 主な用途 |
|---|---|
| HALion Sonic | ピアノ、ベース、ストリングス、シンセサイザーなど、多様な音色を扱えます。メロディーや伴奏など、さまざまなパートに使えるマルチ音源です。 |
| Groove Agent SE | 生ドラムや電子ドラムなどの音を使って、ドラムパートを作れます。キックやスネアなどを組み合わせてリズムを演奏させることに特化した音源です。 |
この2つは、Cubase 15のPro・Artist・Elements・AI・LEに付属しています。Cubaseに付属する音色・ライブラリーの種類はエディションによって異なります。
VSTiには無料・有料のさまざまな製品がありますが、最初は付属音源で音色やMIDIの扱い方を学んでいきましょう。操作に慣れてきて、付属音源だけでは物足りなくなってきたら、有料音源の導入も検討してみてください。
MIDIと音源についてよくある疑問
MIDIキーボードがないと打ち込みはできませんか?
マウスでMIDIノートを入力できるため、MIDIキーボードがなくても打ち込みはできます。
MIDIキーボードを使うと、鍵盤を弾いて音の高さやタイミング、弾く強さを実際の演奏の通りに入力できます。マウスで入力する方法と、実際に演奏して記録する方法を、状況に合わせて使い分けるといいでしょう。
MIDIファイルを渡せば、相手にも同じ音で聴こえますか?
必ずしも同じ音にはなりません。MIDIファイルに入っているのは演奏情報なので、再生する音源や音色が違えば、聴こえる響きも変わります。
制作した音の響きまで伝えたい場合は、WAVなどのオーディオファイルとして書き出して共有しましょう。MIDIは演奏情報を編集したい場合、オーディオは鳴っている音を聴いてもらいたい場合、と目的に合わせて使い分けるといいでしょう。
MIDIには音色を指定する情報もありますか?
MIDIには、対応する音源の音色を切り替える「プログラムチェンジ」などもあります。ただし、切り替え先を指定する情報と、実際の楽器の音を作るデータは別のものです。
音色を指定する情報があっても、MIDIファイルにピアノの録音音声などが含まれるわけではありません。実際に音を鳴らす役割は音源が担当します。
まとめ
今回は、打ち込みを始める前に知っておきたいMIDIとVSTiの仕組みを紹介しました。
- MIDI:音の高さ、タイミング、長さ、強さなどの演奏情報を伝えます。
- VSTi:演奏情報を受け取り、選んだ音色で音を生成します。
- オーディオ:VSTiが生成した音や、マイクで録音した音を波形として扱います。
MIDIノートの位置や長さ、ベロシティを変えると演奏内容が変わり、音源や音色を変えると聴こえる響きが変わります。まずはこの関係を押さえて、これからの打ち込みにつなげていきましょう。
Cubaseのトラックの種類と、追加・削除の手順はこちらで解説しています。

noteでは、Cubase入門編のライト版を無料マガジンにまとめています。こちらもぜひご覧ください。


